レーザー新世代研究センター 白川研究室
フォトニックバンドギャップファイバーレーザー

 通常の光ファイバーでは、コア部の屈折率を周り(クラッド)よりも高くして光を全反射伝搬させます。私たちの研究室では、それとはまったく異なった伝搬メカニズムを持つフォトニックバンドギャップファイバーと、そのレーザー応用の研究に取り組んでいます。
 
 図1(a)にフォトニックバンドギャップファイバーの断面を示します。中央のコアの周りにゲルマニウム(Ge)を添加した高屈折率ロッドが周期配列されたクラッド部を持ち、コアの方が屈折率が低いため光は全反射伝搬できません。しかし周期構造をブラッグ回折する特定の波長帯でフォトニックバンドギャップ(PBG)が形成され、コアを伝搬することができます(図1(b))。これをPBG伝搬といいます。
 コアに利得希土類イオンを添加すると、PBG以外の発光波長の伝搬が禁制化されるので、ファイバーの利得スペクトルを希土類イオンそのものの持つ自然な形状から人為的な形状に変化させることができます。私たちは利得バンドの長波長端で利得が最適化となるような、イットリビウム(Yb)添加PBGファイバーを設計・製作しました(図2)。その結果、1000〜1100nm帯の高利得帯における増幅自然放出が完全に禁止され、従来発生の困難な波長1178nmで160W以上もの高出力高効率増幅に成功しました(図3)。これは従来のレーザーでは不可能なことです。

 更に誘導ラマン散乱や誘導ブリルアン散乱等の非線形性をも制御抑制し、ファイバーでは困難な高尖塔出力・高エネルギーパルスレーザーの実現を目指して研究を展開しています。電界の伝搬を極限まで制御することで、従来のファイバーレーザーの限界を打ち破る、新世代のファイバーレーザーが実現できると確信しています。

図1.(a)フォトニックバンドギャップファイバーの断面の顕微鏡写真。高屈折率ロッドの周期は約10μm。(b)有限要素法で計算したPBG伝搬モード。モード径10.2μm。

図2.フォトニックバンドギャップによるYbの利得スペクトルの人為制御

図3.高出力1178nmYb添加PBGF増幅



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