現在行っている研究

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重力波検出

      重力波とは超新星爆発や中性子連星の合体等の天体で発生する巨大な質量変化による空間の歪みが横波として伝搬する現象であり、アインシュタインの一般相対性理論により予測されている。特にインフレーション等が発生した初期宇宙では電磁波が閉じ込められており、電磁波の情報から得られる天文観測ではその情報を得ることは出来ない。初期宇宙における重力波を検出することで従来の電磁波に代わる新たな天文学の創成が期待されている。
     日本では地上型レーザー干渉計型重力波検出器KAGRAと宇宙空間での重力波検出器DECIGO/Pre-DECIGO計画が推進されており、本研究室ではDECIGOの/Pre-DECIGOための光源の開発を行っている。重力波検出器の光源は極限まで安定化された周波数と強度とともに高い出力も要求されており,これらが検出器の検出感度に大きく寄与している。

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  • KAGRA

  •  KAGRAは神岡鉱山中に建設が予定されている地上型重力波検出器であり、2011年より建設が始められ、016年3月にプロットタイプ(iKAGRA)の建設がこれは片腕が3kmのマイケルソン干渉計で空間変位を検出する装置であり、相対変位dl/l=10-24という非常に高い検出感度の実現を目指している。このため地面振動、熱雑音などの雑音要素を徹底的に排除するとともに光源にも非常に高い周波数安定度と高い出力が求められている。光源に対する要求値には出力150W、周波数安定度106Hz/Hz1/2であり、半導体励起のNd:YAG(1064nm)とファイバ増幅器、コヒーレント加算等の技術により要求値の満たす光源の開発を進めている。
     また使用するミラーも従来にない低損失と高い表面形状が要求されており、そのミラーの製作と特性の精密計測するための技術の開発を進めている。

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  • DECIGO

  •   KAGRAとは対照的に低周波域(0.1~10 Hz) での重力波検出を目指して宇宙型重力波検出器DECIGO(DECI heltz Gravitarional wave Observatory)の建設が検討されている。これは3台の衛星中に設置されたミラーと安定化光源によって一辺1000kmの三角形レーザー干渉計によって重力波の直接検出を行うものである。検出帯域である0.1〜10Hzはインフレーションや宇宙背景放射などの初期宇宙についての知見が期待されている。この干渉計は様々な技術的挑戦が必要とされるため、中型計画であるPre-DECIGO(1辺100kmの三角形レーザー干渉計)の打ち上げを経て実行される予定である。  

     
  • DECIGO/Pre-DECIGO用ヨウ素安定化光源



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      DECIGO/Pre-DECIGO用光源は波長1030nmのfiber DFBレーザーの第二高調波をヨウ素分子の共鳴周波数を基準として周波数を安定化させている。周波数基準となるヨウ素の飽和吸収線は変調移乗法を用いてオフセットフリーな周波数弁別曲線として取得しており、さらに従来使われていた532nmよりも線幅の細い515nmの吸収線を用いることにより長期だけでなく短期的な周波数安定度の向上を図っている。
     衛星搭載のためには小型化、高い機械的安定度、耐被爆性が必要とされ、現在これらを考慮したブレッドボードモデル(BBM)の作成を進めている。

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     人工衛星搭載用として自動で周波数を基準線に合わせてロックを行うシステムの開発も行っている。このシステムはFPGAというICにVHDLという言語でプログラミングを打ち込んで自動制御系を組み上げている。

  • 光周波数基準の精密分配

    •  周波数安定化レーザは、精密分光や計量標準など様々な分野において応用がされている。そこで本研究室では、広帯域かつ高精度の光周波数基準を作製し、光ファイバで他の研究室や遠方の研究機関等に安定化光源を送ることができる精密伝送システムを開発している。光周波数基準は、光周波数コムと呼ばれる光源に超狭線幅光源を位相同期させることで実現される。この光周波数基準を劣化させずに数10km伝送可能な精密伝送システムを目的としている。

    • 光周波数コム

    •  光周波数コムとは光周波数領域に等間隔に縦モードが並んでいる光源であり、光周波数の「ものさし」として使うことが出来る。本研究室ではファイバーモードロックレーザーでこの光周波数コムを作り、その目盛りに相当する周波数を安定化することにより高精度な光の周波数計測が可能となる。また、広帯域な光周波数基準としての応用も考えている。

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    • 超狭線幅光源

    •  フィネスが500,000という高品質な光共振器に対し、熱や振動といった光共振器に対する外乱を出来る限り抑えることにより超高安定な光周波数基準となる。この光周波数基準に半導体レーザーを安定化させることにより線幅1Hz以下という超高安定レーザーが実現出来る。 このような超高安定なレーザーは様々な応用が期待出来る。本研究室では光周波数コムの安定化の基準として用いる。

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    • 光リンクシステム

    •  近年、安定な周波数基準を遠方へ伝送する需要が高まっており、従来の電線を使う方法からより高精度な光ファイバーを用いる方法が研究されている。しかし、光ファイバーは熱や振動などの外乱で伝送信号が劣化するという欠点を持つ。そこで我々はファイバー長の揺らぎを高感度に検出し、抑圧することにより超高安定伝送システムの開発に成功した。 このシステムは様々な大型実験装置(XFEL)の基準信号の伝搬はタイミング同期等に応用されている。

    • XFEL

    •  理化学研究所がSpring-8サイトに建設したX線自由電子レーザー(XFEL:SACLA)では複数個の加速器を高周波を用いて同期させ、発生したX線パルスのタイミングをユーザに知らせる必要がある。この高周波とタイミング信号を同時に送るために光周波数コムを光ファイバーにより分配するシステムを開発した。 これは高精度であるだけではなく、電気的雑音の非常に多い環境中でも安定に動作する。

    新種レーザーの開発

    • Sr光格子時計用トラップ光源の開発

    •  次世代の光周波数標準として期待されるSr光格子時計用のトラップ光源の開発を進めている。 光格子時計とは現行のセシウム原子時計より遥かに高い6500万年に1秒の誤差の実現を目指している原子時計である。これは2001年に東京大学の香取教授により提案され、実現された新しい技術である。

       トラップ光源には高いレーザー強度、マジック波長と様々な要求があるため我々は外部共振器型半導体レーザーをツリウム添加フッ化物ファイバーを用いた光増幅器により光源の開発を行っている。

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