中川研究室

UEC/ILS 原子光学グループ             

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単一原子トラップとRydberg原子

レーザー冷却・トラップ技術を用いることにより原子1個を安定に真空中にトラップすることがことが可能となります。このようにしてトラップされた原子を量子ビットとして用いることにより量子コンピューターなどの量子情報処理に応用することができます。このようにトラップされた原子は固体デバイス中の電子と異なり周囲の環境の影響を受けにくいため、長い時間量子情報を保持することができるメリットがあります。本研究室では原子を1個ずつトラップする単一原子トラップを用いて中性原子を用いた量子コンピューターの実現を目指して研究を行っています。

下図に原子を1個ずつトラップしてこれを観測する装置の概要を示します。超高真空ガラスセル中のRb原子はレーザー冷却によって1mK以下に冷却されトラップされます。

 

トラップされた原子からの蛍光はセル中のレンズで集光されCCDカメラおよびフォトンカウンターによって計測されます。原子からの蛍光強度は原子数に応じて階段状に離散的な値を示すため、これから原子数を見積もることができます(下図)。

 

量子コンピューターの実現には2つの量子ビット間の量子ゲート操作が必要となります。これには原子の場合、2個の原子間に量子力学的な相関(エンタングルメント)を作る必要があります。基底状態の原子の場合、原子間の相互作用は非常に小さいため原子間の距離を100nm以下に近づける必要があります。これに対して原子の高い励起状態である主量子数nが非常に大きなRydberg状態を用いて大きな原子間相互作用を得ることが検討されています。