中川研究室

UEC/ILS 原子光学グループ             

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ボース・アインシュタイン凝縮

原子は室温では非常に小さな粒子としてふるまいますが(図1左)、この原子の温度をレーザー冷却によって室温の100万分の1以下に下げると原子は波の性質が顕著に現れ粒子としてよりも波束としてふるまいます(図1中)。さらに原子の温度を下げて隣合う原子同士の波束が重なり始めると多くの原子の波束が全て同一になってしまいます(図2右)。これはボース・アインシュタイン凝縮と呼ばれる現象で、1924年にボースとアインシュタインによってその存在が予言されました。

1995年、コロラド大学において最初に原子のボース・アインシュタイン凝縮(Bose-Einstein Condensation)が実現され、それ以来このボース凝縮原子の性質の解明およびその応用に関する研究が世界中で行われています。

 

図1 様々な温度における原子のふるまい

原子のボース凝縮を実現するには1mK以下の極低温と1014/cm3以上の高い原子密度が必要になります。このためレーザー冷却法を用いて予め原子の温度を100mK以下に冷却し、さらにこの原子を磁場トラップに移してこの中で蒸発冷却を行うことによりボース凝縮が実現されます。図2にこのような方法を用いて生成された87Rb原子のボース凝縮体の速度分布の様子を示します。相転移温度(Tc)以上では速度分布がガウス型の分布をしていたのが(図2左)、相転移近傍まで温度を下げると中心に速度がほとんどゼロの凝縮成分が現れ、相転移温度以下ではほぼ完全な凝縮体になっているのが分ります。

このように生成されたボース凝縮原子は位相が揃ったコヒーレントな物質波とみなすことができ、これを操作して光と同様に干渉や回折効果を引き起こす研究は原子光学と呼ばれています。

 

図2 BEC相転移付近における原子の速度分布